『ライオンごうのたび』と希望
わたしは、子どものころから、学校の勉強があまり好きではありませんでした。 なんでこんなことをしているのだろうと思っていました。 その意味がわかったのはずいぶん大人になってから。 世界は不思議なことにあふれていて、謎を探っているうちに、 算数や理科、歴史などが できていったのではないか。 つまり、どんな学問にも根底には不思議があり、 そこから進化の樹形図のように各分野が展開して行った。 そう考えるようになったのです。
例えば、宇宙はどこまで広がっているかを解決するには、 天文学や物理学、数学が必要になってくるし、 或いは、人間とは何かを追求するなら、 哲学や生物学、文学、芸術なども繋がってきます。
もう少しはやく、この観点に気づいていたら、つまらないと思っていた勉強が、 反対になっていたのではないだろうか。 素朴な不思議から出発していれば、諸学問はぐっと親しみやすく、 実は勉強は楽しかったにちがいない。 これが、本書を書くきっかけとなりました。 子ども達に実践してほしいと思ったのです。
不思議なことを不思議と思って問うこと。 そして何より、自分の好奇心に基づいて取り組むこと。 そこには無理がなく、結果、その分野がより得意になり、その人自身はワクワクとし続け、ひいては人々を喜ばせるものです。
あなたが思う不思議は何ですか? そこからはじまる樹形図をこころの中にかたちづくることこそ、 私は、現実のなかにあって、希望が宿ると思うのです。
森岡督行
『ライオンごうのたび』(あかね書房)
宇宙から地中、海、空を移動できる乗り物「ライオンごう」。読者はライオン号の乗客となって、ライオンを探す旅へ出かける。宇宙で火星に住む人にあいさつして、土星をながめながらドーナツを食べ、地球で地中の化石を発見し、ショーヴェの洞窟やピラミッドを訪れ、人類の歩みをたどる大冒険。そして最後にたどり着く先は?
・全国学校図書館協議会選定図
・2022えほん50選定図書
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「見えない木」 山口洋佑/アクリル 2024
この絵は、「何かを不思議と思う気持ち」を種として、さまざまな学問が樹木のように進化した様子を示しています。あなたの思う不思議は何ですか? ぜひここから自らの思考を広げてみてください。そこにこそ、世界を肯定する希望があると思うのです。
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