関連展示 読書・アート

読書案内

長田弘
『世界はうつくしいと』
(みすず書房)

「『世界はうつくしいと』は、そう言っていいなら、寛(くつろ)ぎのときのための詩集である。寛ぎは、試みの安らぎであるとともに、「倫理的な力」ももっている。「寛ぎとはありとあらゆるヒロイズムを進んで失うこと」(ロラン・バルト)であるからだ」(著者「あとがき」より)。表題作「世界はうつくしいと」は本企画展示の通奏低音をなすものである。

遠藤周作
『女の一生 一部 キクの場合』
『女の一生 二部 サチ子の場合』
(新潮文庫)

日本を代表するカトリック作家遠藤周作(1923−1996)による2作品。 『女の一生 一部」は、幕末から明治の長崎におけるキリシタン弾圧の史実を背景に、キリシタンの青年に思いを寄せた娘キクの短くも清らかな一生を描いた作品。 『女の一生 二部』は、第二次世界大戦下の長崎で出会い、互いに好意を抱きあうサチ子と修平の過酷な運命を描く作品。修平は聖書の教えと兵士の義務との葛藤に苦しみながら、特攻隊員として出撃し、サチ子の住む長崎は原爆にみまわれる。

遠藤周作
『札の辻』
山根道公編『遠藤周作短篇集』
(岩波文庫)所収

カトリック作家遠藤周作の短編。あるカトリック大学の卒業生が、同窓会へ向かう途中で、学生時代に「ネズミ」というあだ名の修道士と一緒に、江戸時代にキリシタンたちが処刑された「札の辻」に行ったことを思い出す。同窓会で彼は「ネズミ」のその後の人生を聞かされたのだった(修道士のモデルは、アウシュビッツである男性捕虜の身代わりを申し出て餓死刑で死んだコルベ神父)。

永井隆
『乙女峠 津和野の殉教者物語』
(サンパウロ)

津和野に配流されて多くの殉教者を出した浦上のキリシタンの史実を、長崎で自らも被爆しながら被爆者の治療に尽くしたカトリック医師永井隆(1908−1951)が著したもの。永井はこの作品を書き上げた直後に被爆による白血病のため死去した。

佐々木宏人
『封印された殉教』上・下
(フリープレス)

戦前に札幌や横浜の教区長を務め、戦争に反対する言説で逮捕されるなど弾圧を経験し、終戦直後不可解な死を遂げた司祭の生涯と事件の真相を追いかけるルポルタージュ(著者は元毎日新聞記者で、難病と闘いながら本書を書き上げたカトリック信徒)。

重兼芳子
『闇をてらす足おと
岩下壮一と神山復生病院物語』
(春秋社)

芥川賞作家でプロテスタント信徒であった重兼芳子(1927−1993)が神山復生病院の患者からの聞き取りと取材を元に書いた岩下壮一と患者たちの物語。

林義子
『シスターたち
その歴史と今と未来に向かって』
(女子パウロ会)

修道生活の歴史、シスターの生き方やシスターになるまでの過程、今も世界に広がるシスターたちの働きについて、分かりやすく解説した一冊(著者は援助修道会のシスター)。

児島なおみ
『聖マグダレナ・ソフィア・バラ』
(偕成社)

『空とぶおばあさん』『うたうしじみ』などで知られる絵本作家児島なおみによる聖マグダレナ=ソフィア・バラの伝記絵本(作者は聖心女子学院の卒業生)。

フィル・キルロイ
(安達まみ・冨原眞弓訳)
『マドレーヌ=ソフィー・バラ
ーキリスト教女子教育に捧げられた燃ゆる心ー』
(みすず書房)

膨大な書簡や歴史資料を元に、聖心会の創立者聖マグダレナ=ソフィア・バラの生涯と聖心会の歴史を描く本格的な評伝(著者は聖心会のシスターで歴史家。翻訳者は本学学長安達まみと元教授冨原眞弓)。

美智子
『橋をかける
子供時代の読書の思い出』
(文藝春秋)

戦争中、本によって「根っこ」と勇気を与えられたこと、そして、本を通して子供が希望と平和を得ることを願う講演録。 上皇后美智子陛下は、小学校から大学までカトリック学校で学ばれた(雙葉小学校、乃木高等女学校附属小学校(現・湘南白百合学園小学校)、聖心女子学院中・高等科、聖心女子大学)。本学外国語外国文学科(現:英語文化コミュニケーション学科)7回生。

緒方貞子
『共に生きるということ
Be Human』
(PHP研究所)

著者は1927年(昭和2年)生まれ。旧姓・中村貞子。幼少期をアメリカで過ごした後、小学校5年生の時に日本に戻り、聖心女子学院に転入、高等女学校を経て、聖心女子大学外国語外国文学科(現:英語文化コミュニケーション学科)を卒業(1回生)。その後、父や、聖心女子大学学長エリザベス・ブリットの勧めでジョージタウン大学およびカリフォルニア大学バークレー校の大学院で学び、政治学の博士号を取得した。その間、一度日本に戻り、結婚して、博士号取得後は大学の非常勤講師などを務めていたが、市川房枝に誘われて、国連の日本代表団に加わり、1976年(昭和51年)、日本初の女性の国連公使となり、その後、国連人権委員会日本政府代表を経て、1991(平成3)年から2000(平成12)年まで、第8代国連難民高等弁務官を務めた。2003年(平成15年)から2012年(平成24年)まで国際協力機構 (JICA) 理事長。2019年(平成31年・令和元年)死去。

須賀敦子
『遠い朝の本たち』
(ちくま文庫)

著者は1929年(昭和4年)生まれ。小林聖心女子学院から東京の聖心女子学院に転校し、戦争中再び小林に戻って卒業し、戦後、聖心女子大学に進んで外国語外国文学科(現:英語文化コミュニケーション学科)(1回生)を卒業した著者が、子供時代から大学時代までの読書体験をつづるエッセイ集。著者は大学を卒業後、20代後半から30代が終わるまでイタリアで過ごし、イタリア人と結婚した。夫の死後、日本に帰国し、上智大学などで非常勤講師を務めるかたわら、イタリア文学の翻訳者、随筆家として知られるようになった。1998年(平成10年)死去。

関連アート作品

本展示の構成を受けて

本展示の構成を担当する中で、禁教という日本社会の状況を経て、開国と同時にキリスト教の布教に命を懸けてきた人々の営みの一端に触れることができた。
現代社会の日常に深く根付いた様式や価値観の背景には、数えきれないほど多くの人々の尽力があった。展示資料を紐解く中で、信者の生き方や当時の新聞記事、シスターの言葉遣いなどの端々から、生きることを諦めずに進んでいく姿勢に人としての強さを感じた。

真理に至る必然性の中で生きる人たちに美しさが見えてきた。

生活に溶け込んだ風景からかすかな光の煌めきをすくいとる行為や、
自らの美への追求に真摯に向き合い続けている人
──私にとっての現代作家とは、美の真理を求めた存在である。
作家たちのひたむきな姿勢は、作品に光を宿している。
観覧者に対し一定の距離を保ち、観る者の視線を自然と引き寄せる力を持っている。
本展示への導入を現代美術が飾り、展示室に緊張感を与えたい。

空間デザイン:トーキョー・テンダー・テーブル株式会社 小林丈史

森島 巴美 Morishima Tomomi
画家

1984年、フランス・パリ生まれ。2006年多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業後、渡独。カールスルーエ州立美術アカデミーでヘルムートドナー氏( Helmut Dorner)に師事し、絵画を学び、2012年卒業。現在はドイツカールスルーエを拠点に活動。作品には、建築、風景、人物などのモチーフが多い。具象的なモチーフの側面に光を帯びた色彩には、抽象絵画とのあわいが一枚の中に存在する。

特別インタビュー

赤木 遥 Akagi Haruka
写真家

1987年、埼玉県生まれ。2011年、東京造形大学造形学部美術学科絵画専攻卒。在学時より大西成明氏に師事。卒業後、舞台撮影会社・婚礼撮影会社で商業写真を撮影。(2018年~フリーランス)商業撮影と並行して、ネガカラーフィルムでスナップ撮影し自身の暗室でプリント、展示等で作品発表を続けている。2023年より東京造形大学非常勤講師としても勤める。

特別インタビュー

長南 芳子 Chonan Yoshiko
ジュエリーデザイナー

東京藝術大学工芸科で鍛金を学ぶ。2008年より空想の街をテーマにしたオブジェとアクセサリー制作を始める。2017年東京/谷中にアトリエショップ穀雨をオープン。同年、マリッジラインをスタート。心に響く情景をジュエリーやオブジェを通し形にしている。

特別インタビュー