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【オンライン講演会】中国⼥性の装いと⾝体性 -纏⾜からチャイナドレスへ-

【講演会での質問へのご回答】2022.06.29
多くの方にご参加いただき誠にありがとうございました。
寄せられた質問に、謝黎先生より回答をお預かりいたしました。

Q1. 纏足を多面的に見る重要性を指摘して下さったことは、大変重要だったと思います。ただ、それは女性の身体が使われたということについては、ジェンダー視点からどう評価されるでしょうか?
ジェンダーの考えは新しい視点ですから、纏足の時代の女性に当てはめて議論するのは難しいと思います。当時の女性観を理解することが大事かと思います。わたし自身、こうした歴史的事態を、どのようにジェンダー視点から捉え返せば良いのか、悩んでいるところです。
Q2. 実際に中国の教育機関では纏足の文化についてどこまで深く教育しているのでしょうか。
中国では、かつての悪しき風習として語られています。
Q3. 謝黎先生は実際に纏足を見たことがあるということでしたが、その時どのように思ったのかということをお聞きしたいです。
纏足(靴を履いた状態)は見たことありますが、素足を見たことはありません。
Q4. 纏足は、単に服飾としてだけでなく、女性のアイデンティティなど多方面からアプローチできることを学びましたが、纏足の研究は、主にどのような視点から研究されているのでしょうか。
纏足だけを取り上げるのではなく、服飾・ジェンダー・身体といった視点からチャイナドレスや女性に関する内容を調べてます。
Q5. 纏足の靴は自分で作るものだったのでしょうか?母から子へ受け継がれるようなものなのか、職人みたいな人がいるのでしょうか?
纏足の靴作りは職人ではなく、母から娘に教えることが多いです。
Q6. 纏足している女性が靴を脱ぐのはどのような時でしょうか?新婚の寝所を姑が覗くというお話がありましたが、眠る時若しくは共寝をする場合は靴を脱ぐのでしょうか?また、スライド資料の中にレインシューズがありましたが天候によって靴を履き替えてもいたのでしょうか?
足を手入れするときに脱ぎます。足の形が出来上がっているので、レインシューズや寝室用靴、葬式用靴など、ほかの靴に履き替えることはできます。結婚後、夫の家に着いてから、皆の前で新婦の足の大きさや形など、夫家の人々に品評されます。眠るときではありません。
Q7. 纏足用の靴に施す紋様には何か意味が込められているのでしょうか?縁起や家柄等を示すものなのでしょうか?
刺繍の紋様は草花虫蝶など縁起の良いものが多いです。
Q8. 纏足と天足の違いは何でしょうか?
纏足―変形した足。天足―天然(自然)の足。
Q9. 先生は最近の中国での「漢服」の流行についてはいかがお考えでしょうか?美しいものへの憧れは素晴らしいことと存じますが、チャイナドレス愛好者としては「漢服」ブームに少々戸惑っています。また、最後にご紹介くださった参考文献のリストをウェブサイトに載せていただきたいです。
近年の中国社会では、チャイナドレス愛好家と漢服ファンの間に論争が起きてます。『チャイナドレス大全―文化・歴史・思想』(青弓社2020)の第7章(旗袍・唐装・漢服の論争ー「中国人」の「伝統服」とは何か)に詳しいことを記載してあります、ご参照いただければ幸いです。また、文献リストについて、主に以下の文献を参考しました。*高洪興2007『纏足史』上海文芸出版社。*ドロシー・コウ2005『纏足の靴―小さな足の文化史』平凡社。*冯骥才1999『纏足』小学館文庫。
Q10. 現在の中国で、纏足をされている女性はいらっしゃるのでしょうか?
纏足をしていた女性が生きていれば100歳を超えています。今はご存命の方はいないと思います。
Q11. 妓女の方が纏足をしていたと伺いましたが、これは逃げにくくするためなどの要因もあったのでしょうか。また、どの国の歴史にも自身の身体を加工させてきた歴史がありますが、今後私たちは「ありのままの自分(肉体)」を受け入れられる日が来ると思いますか。
まず、妓女の纏足は逃げにくくするというより、性的な魅力をアピールできる手段として、纏足をするのが当たり前でした。逆に、しないと妓女になれないと思います。次に、ありのままの自分(肉体)を受け入れられる日は来るかどうかの問題です。髪を整えたり、爪を切ったりすることも「身体加工」の一部とされるので、本当の意味でいう「ありのまま」はあり得ないです。ただ、加工の度合いの問題はあるかと思います。
Q12. 纏足は明代になぜ急激に流行したのでしょうか。
明代は漢人支配の社会なので、漢人の文化が大流行したと思います。特に、漢人の皇帝が纏足の女性を好んでいたので、これも流行の一因になったかと思います。宮廷の女性はみな纏足をしていて、徐々に社会全体に広がっていきました。
Q13. 纏足に対する医者からの批判はなかったのでしょうか。
時代によります。纏足が流行っていた時代は、医者も纏足オタクですから、批判しなかったと思います。
Q14. 纏足が施される時期、身体的な痛みを緩和する医学的治療やお薬などは、当時用いられていたのでしょうか。
骨を柔らかくする薬や痛み止め用の漢方薬はたくさんありました。また、明矾(ミョウバン明礬)もよく使われてました。そのほか、藍染の布で足を巻くと消毒の効果もあるといわれています。
【その他】見逃し配信をご希望の方
以下申込フォームより7月7日(木)までにお申込みください。ご登録いただきましたメールアドレスに、Youtube視聴URLをお送りいたします。尚、翻訳字幕をご希望の方は、Youtubeからご自身で設定をお願いいたします。。
https://forms.gle/iUDjEg5bD8yVy7vu7

以上

【オンライン講演会】
中国⼥性の装いと⾝体性 -纏⾜からチャイナドレスへ-

纏⾜は、歪められた⼥性の⾝体の苦痛や、男性による抑圧の象 徴として語られることが多い。それでも⼥性たちがやめないのは なぜだろうか。あんな⾟い思いをして、⼥性たちが⼿にしたものは何だろうか。当時の中国の男たちは纏⾜のどこに魅⼒を感じていたのだろうか。纏⾜という不思議な⽂化現象は、中国の内外からどのように⾒られていたのだろうか。
20世紀初頭の中国では、こうした纏⾜をしている⼥性がいる中で、チャイナドレス(旗袍)姿のモダンガールたちも現れてきた。⼩さく縛られている纏⾜と、ボディラインを露わにする旗袍。纏⾜からハイヒールへと変化する中で、⼥性の⾝体はどのよう位置づけられていたのだろうか。
今回は、この装いに⾒る⾝体の束縛と解放の歴史を通して、中国⼥性の⾝体と個⼈・家・国家とのかかわりを辿ってみる。そこから、なぜ、⼈間はありのままの⾝体に満⾜しないのだろうか、痛みや苦痛を耐えて⼿にしたものは何だろうか、といった問いに ついてもみなさんと⼀緒に考えたい。

 

◆ 開催日時: 2022年6⽉11⽇(⼟)13:30〜15:00
◆ 会場: オンライン(Zoomウェビナー)
◆ 参加費: 無料

 

 

 

 

 

◆ 講師: 謝黎(しゃ れい)
上海⽣まれ。⽂化⼈類学専攻、博⼠(学術)東北芸術⼯科⼤学芸術学部准教授を経て、
2021年4⽉より聖⼼⼥⼦⼤学グローバル共⽣研究所客員研究員
*著書*
『チャイナドレスをまとう⼥性たち―旗袍にみる中国の近・現代』(2004年、⻘⼸社)
『チャイナドレスの⽂化史』(2011年、⻘⼸社)
『チャイナドレス⼤全―思想・⽂化・歴史』(2020年、⻘⼸社)