当時、まだ10代前半だった子どもたちが描いた絵。
楽しかった学校や遊園地、美しい花や蝶を描いていても、
彼らのホロコーストの事実を語るもの。
絵から聞こえる声に耳を傾けてほしいと思います。
でも、疑問に思いませんか?
「地獄」と言われた収容所で、こんな絵が描けたこと、
そして、戦争が終わり、解放されたとはいえ、無秩序と混乱のなかで、
どうして4000枚もの絵が見つかったのか、今に残すことができたのか。
絵を描いた子どもたちの名前。
子どもたちがいつ生まれて、
いつアウシュヴィッツに送られたかの月日までもがわかるのか。
そこには、どんな状況でも人間の尊厳を失ってはいけない、と
理不尽な大きな力にも負けず、創造する力を持ち続けた人たちがいた。
そして、同じ過ちを二度と繰り返してはならない、だから
目を背けたくなるような事実だけど、後世に伝えようと務めた人たち。
大勢の人々の強い決意があったのです。
ノンフィクション作家
野村路子